専門商社
売上/40億円
社員数/60名
設立/1990年
新卒採用の事例
●無理を承知で新卒採用にチャレンジ
私が顧問をしているこのB社では15年前に初めて新卒採用を行った。
それ以来、毎年2〜10名程度の新卒採用をしており、今年も新卒採用をしている。
業績の苦しい時もあったが、続けることが将来のためと割り切り継続し、今では全社員の9割が新卒採用者からなっている。
新卒採用を始める前の社員数は10数名だった。社長(創業オーナー)がずっと頭を抱えて悩んでいたのは職場の雰囲気だった。社員同士のケンカも多く、怒号が飛び交ったり時には手も出ることがあるほど乱れていた。
これでは会社を大きくするどころではない、組織の土台が全くできていない。なんとかしなければという危機感に突き動かされた社長が意を決して新卒採用を決断したのだ。
知り合いの社長からの依頼で私がB社の顧問となってから、あらん限りのノウハウを駆使し初年度に何とか6名を採用した。10数名の荒くれ者ばかりの会社が6名も採用したのだ。内訳は男子3名女子3名。男子は法政、明治、東海。女子は慶応、東京外語、東京女子。
●新卒採用は続けることに意味がある
初めて新卒を採ったこともあり、なかなか受け入れが難しく、10数年経った今その年の採用で残っているのは男子1名のみだが、その後も新卒採用を続け今年も継続している。
毎年新卒を採用するようになってからは、それまでバラバラで荒れていた会社に縦の序列ができ、当初と比べると組織が見違えるほど締まってきた。
その後、上場が狙えるほどになったが途中で業績が落ち一度断念。しかし現在は業績も好調に推移し、また上場を視野に入れ再度挑戦している。
3年前に初期の新卒採用者から取締役が誕生し、社長の片腕として経営を支えている。新卒を採り育てるのは大変だったが、今思えばやはり13年前に勇気を持って決断しチャレンジしたのが良かったのだと思う。
●どういう人を採るか? 1万5000人以上面接し達した結論
どういう人材を採ればいいのかにはいろいろあるが、私が長年採用に携わって来て感じたことは、最終的には「人柄」だということだ。
リクルート時代からあわせれば1万5000人以上面接してきたが、面接時の印象と入社後のその人の実績を見比べて分かるのは、一番伸びるのは「素直」な人だということだ。
持って生まれたいろいろな能力もさることながら、社長を始め上司や先輩の助言や指導を素直に聴き真面目に努力する人が結局一番伸びて戦力になっている。
これは企業人事に50年以上携わった労務担当のベテラン弁護士も同じことを言っていた。やはり人間は素直でなくてはいけないということだろう。
●新卒採用成功のカギ
中小企業にとって新卒採用が成功するかどうかのカギは、「惚れるのではなく惚れさせること」ができるかどうか。待遇(給与だけでなく福利厚生なども含めると)では大企業には勝てない。社長の人間力で引っ張るしかないのだ。
相手(学生)の立場に立って、今自社がどう見えているのか、相手は何を求めているのか、などを嗅覚鋭く感じ取り、採用ストーリーを作りながらそれに落とし込んで行くことが必要になる。
これをきちんとやっていくと、毎年徐々に質の高い学生が採れるようになり、それにより既存社員も刺激を受け自然と会社全体のレベルが上がって行く。
これも新卒採用の大きな効果と言うことができるだろう。
●会社の価値観が企業文化を生み出す
新卒の育て方で特に気をつけているのは、「頭でっかちにしない」ということ。
「免許を取ったら運転しろ」という言葉をよく使うのだが、この考え方で徹底的に新卒を鍛えて来た。
英語ができなくても海外に電話させる。海外出張は一人で行かせる。自分で目標を立てさせ、自分で結果を出させ、自分で責任をとらせる。
多少の失敗は成長への階段を上るチャンスだと捉えどんどん行動させている。これを続けた結果、新人がみるみる成長したくましくなっていった。
新卒の比率が5割を超えたあたりからA社特有の文化ができてきたように思う。その頃から退職者も減り、定着率が格段に良くなってきた。
最近では「◯◯(社名)らしいよね」といった言い方が良くされるようになった。愛社精神というか、会社に対する愛着が増したように思う。
今や新卒で入社した社員の中から30代の取締役が2名誕生し社長を支えている。
組織が安定し、更なる目標にチャレンジできる態勢ができつつあるように思う。

